速さの理由を知る。安全の仕組みを知る。WordPress運用の「なぜ?」を解く技術コラム。
This entry is part 13 of 13 in the series KUSANAGIプロダクトマネジャーのブログ

WordPress 7.0 の AI 機能を試してみた ~6.9から積み上げてきた設計思想と KUSANAGI での実験

相原 知栄子
WordPressAIKUSANAGIOSS

こんにちは。KUSANAGI 開発チーム、プロダクトマネジャーの相原です。

2026年2月20日、WordPress 7.0 Beta 1 がリリースされました。今回注目したのは AI 関連の新機能です。6.9 から積み上げてきた設計思想がいよいよ形になりつつあり、実際に試さずにはいられませんでした。beta1 環境でプロトタイプを作った過程とともに、WordPress の AI に対する考え方をお伝えします。

「AI Building Blocks」という構想

WordPress AI チームは、2025年5月に正式発足しました。チームが掲げる「AI Building Blocks」という構想は、WordPress が AI と連携するための基盤を3つのコンポーネントで構成するというものです。

Abilities API は、プラグイン・テーマ・コアが自分の機能を「Ability(能力)」として登録する仕組みです。それぞれの Ability には名前・説明・入出力の定義・権限チェックが含まれ、機械にも人間にも読める形で一元管理されます。

MCP Adapter は、登録された Ability を MCP(Model Context Protocol)を通じて外部 AI ツールに公開するコンポーネントです。MCP は Anthropic が2024年11月に公開した、AI と外部ツールをつなぐ標準プロトコルで、Claude や ChatGPT、Gemini といった AI アシスタントがこの仕組みを通じて WordPress の機能を理解・操作できるようになります。

WP AI Client は、WordPress の中から AI プロバイダーを呼び出すレイヤーです。Google Gemini、OpenAI、Anthropic など複数のプロバイダーに対して共通の方法でアクセスでき、どのプロバイダーを使うかはサイト管理者の設定に委ねられる、プロバイダー非依存の設計になっています。

この3点セットを「外から AI に WordPress を理解させる仕組み」と「中から AI を動かす仕組み」として整理すると、6.9 から 7.0 への流れが見えてきます。

WordPress 6.9:基盤の登場

実はこの構想の始まりは、MCP の WordPress 実装を開発しようとしたことでした。「WordPress を MCP サーバにしよう」という動きが生まれたとき、根本的な問題が露呈します。WordPress には、プラグインやテーマが持つ機能を一元的・標準的に登録する土台となる仕組みがなかったのです。

この問題を解決するために生まれたのが Abilities API です。WordPress 6.9(2025年12月)でコアにマージされ、あわせて WP AI Client SDK の初期リリース(v0.1.0)も公開されました。Ability の登録は、フックに名前・説明・コールバックを渡すだけです。プラグインやテーマが自分の機能を「AI に使ってもらえる形」で公開できる、シンプルな仕組みになっています。

6.9 の段階では、外部の AI ツールが MCP Adapter を通じて WordPress の機能を発見・操作できる「外から AI に見せる」基盤が整いました。

WordPress 7.0:「中から AI を動かす」仕組みが加わる

7.0 beta1 で新たに加わったのが、WP AI Client のコアへのマージです。公式リリースノートでは「Web Client AI API」として紹介されており、WordPress の内部から直接 AI プロバイダーを呼び出し、登録済みの Abilities をツールとして渡して動作させることができます。

さらに 7.0 では Client Side Abilities API も導入されています。これまでサーバー側(PHP)だけだった Abilities API がブラウザ側(JavaScript)でも動作するようになり、ブロックエディタなどフロントエンドの文脈でも AI 連携が可能になりました。

6.9 で「外から AI に見せる」基盤が整い、7.0 で「中から AI を動かす」仕組みが加わった。この2段階の進化によって、AI Building Blocks の全体像がようやく形になりつつあるように感じました。

実際に試してみた

私たちは昨年10月、Gemini CLI をベースにした「KUSANAGI AI アシスト」のベータ版を提供開始しています。ターミナルで AI と対話しながらサーバを操作できる仕組みですが、「管理画面という UI から使えるようにしたい」「MCP でさらに知識を拡充したい」というロードマップがあります。これらが WordPress の提供する機能で実現できるのであれば素晴らしいことです。そこで、調査も兼ねてプロトタイプを作ってみることにしました。

WordPressの管理画面でKUSANAGIの状態(kusanagi status)を確認

最初に壁になったのは AI との連携です。WP AI Client は枠組みのみなので、実際のプロバイダーとの接続は別途必要になります。開発チャットをたどっていくと、コミュニティの方がプロバイダープラグインを公開してくれていたので、ありがたく活用させていただきました。ただ、自分が使えるモデルを動かすまでのモデル指定まわりには、少し時間を取られました。

一方で、KUSANAGI 固有の機能を Ability として登録する部分は、思ったよりスムーズでした。サービスの稼働状態・Nginx ログ・プロファイル一覧の3つを登録し、管理画面から「サーバの状態を教えて」と入力すると、AI が nginx・PHP-FPM・MariaDB の稼働状況を確認して自然な日本語で説明してくれます。「wp70 のアクセスログを見せて」と聞けば、そのプロファイルのログが要約されて返ってきます。

この結果から改善提案などをしてくれたら素敵ですよね。夢が広がります。

アクセスログを解析して解説

コマンドを覚えなくても、WordPress の管理画面から日本語でサーバに「話しかける」感覚で情報が取れる。KUSANAGI AI アシストで目指していた体験が、WordPress のエコシステムの中で形になった瞬間でした。

ホスティング側から見ると、自社のサーバ構成や管理コマンドを Ability として提供することで、AI がその環境を「知っている」状態を作れます。汎用的な AI にホスティング固有の文脈を持たせる方法として、この仕組みには可能性を感じています。

「インフラより体験」という問いかけ

この機能がコアにマージされる過程では、開発コミュニティでさまざまな議論がありました。その中で印象に残っているのが、Matt Mullenweg のこの言葉です。

“We can build all the things, but if we don’t tell people or teach them or show them or bring them along, it doesn’t matter.”

どんなに優れたインフラを作っても、ユーザーが「すぐに何かできる」と感じられなければ意味がない、という問いかけです。

KUSANAGI が目指すユーザー体験

体験を届けることの大切さは、私たちが KUSANAGI を開発する中でも強く感じていることです。KUSANAGI はもともとコマンドラインでコントロールするという思想でしたが、時代の変化に合わせて新しいユーザー体験が必要だと考えています。

おわりに

WordPress 7.0 は 2026年4月9日の正式リリースに向けて、まだ変わり続けています。Beta 2 では API キーを一元管理できる「Connectors」画面の搭載も予定されており、AI 機能としても重要な一歩になりそうです。

Gemini CLI でターミナル越しに体験した「サーバと会話する感覚」が、WordPress の管理画面の中に入ってくる。そんな未来が、だいぶ近づいてきた気がしています。WordPress の未来とともに、引き続き追っていきたいと思います。

参考:

Webサイト運用の課題解決事例100選 プレゼント

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